不可解な報道

著作権の問題を云々されることになるであろうが、本質は理屈に反する報道で読者を翻弄する根が深い問題にある。
東京新聞だけの問題ではなく多くのマスコミに見られる問題である。NHKと言えども大差はない。

社会正義のために内部通報をする場合、予め同意を得てから通報しなければならない訳はない。
同様、報道の明瞭な間違いを指摘する前に報道機関の同意を得る義務があるとすればそれは正義ではない。
「お宅の記事が間違っているから糾弾Webサイトに引用させてください」 と予め申し出てそれを了承する報道機関があるであろうか? このサイトでとりあげる記事の内容を理解して頂くには記事をそのまま引用するのが最も良い方法であろう。  自分の要約で引用すれば、間違いをするかもしれない、恣意的な引用と取られるかもしれない。

 私の理論に間違いがあれば指摘して頂きたい。論理が正確であれば、それを認めることに私はなんら躊躇はない。 ただし、心情論での説得には応じる気持ちは全く無い。

 

2013年9月30日 東京新聞朝刊 「環境と暮らし」より

 
川崎にあるスポーツクラブ「NAS新川崎」では、プールの水をろ過する循環配管の途中に発電機を取り付けて電力を取り出すのだという。

  発電した電力が循環ポンプの電力の一部をまかなっているという記事である。あまりに呆れた、あえて、記事を読んで頂きたいと思う。こんなことが「良いことと」思われてしまうような記事を放置するわけにはゆかない。

循環ポンプが作りだすエネルギーの一部で発電し、その電力で循環ポンプの消費電力を補うのだそうだ。

このシステムを開発したのは川崎に本社を持つ濾過装置メーカー「ショウエイ」だそうだ。

エネルギー不変の法則を知っているならば (小学校でも習う)
◎ 「ショウエイ」はこんな馬鹿な装置を考えだす訳はない、こんな装置を売り込んで恥ずかしくないはずがない
◎ こんな装置を有効と思って導入するスポーツクラブもない
◎ こんな装置に300万円掛けて450Wの電力を得て喜んでいるはずはない
◎ こんなネタに飛びつく記者はいない、 ついでに、こんな記事にOKを出したデスクにもあきれる

 『小水力発電 イコール エコ 環境に優しい』と思い込ませるマスコミ、自ら考えることのない記者と読者。これではいけない。

何の思考もなく「ショウエイ」 の思うつぼにはまって300万円掛けてエネルギーのロスを買わされたのが「NAS新川崎」なのだ。
仮にロスがないとしても 450Wの発電量で電力料300万円を回収するのにどれほどの時間がかかるか? 考えたことがあるのだろうか?
おそらくメンテナンス費用を回収するのがせきのやまであろう。

 これの開発に関わった人々は発電機 と モーターで 永久機関を作れると思っているに違いない。
さもなければ悪意の売り込み以外の何物でもない。

宮本直子という東京新聞の新聞記者も思考欠如の「(訳はわからないが) 何となくエコ」で満足する人間なのであろう。

記事によると他のNAS三店舗でも同様の発電システムを採用しているとのこと。計4店舗で\1,200万円掛けてエネルギーを無駄にしているのだ。

記事を読み進むと、川崎市もバカなことにこれをモデル事業にしているらしい。
全国小水力利用推進協議会理事の小林久茨城大教授の学者らしからぬコメントも疑問である。 氏のWebサイトを見ると、このようなコメントをする方とは思えない。 新聞記者の表面的で軽薄な質問に乗ってしまわれたと思いたい。

多少専門的になるが
この発電機の出力が安定しているとは思えない。写真からは直流発電機の模様である。 循環ポンプの消費電力を補うためにはインバーターをとおして必要電圧を安定して得るようにし、位相を合せていることであろう。 それだけの設備を「NAS新川崎」今後費用負担してメンテナンスしなければならないのである。

みんなが「エコだ」 と言うことには裏があることが多いことは肝に銘じておくべきである。報道機関は本当にエコかどうか裏付けをとるべきである。

「ショウエイ」の山岸氏に電話問い合わせた。納得できる明確な説明は無かった。技術者の説明としてはまったく恥ずかしい。
東京新聞の連絡フォームから指摘したところ、生活部伊東治子デスクから回答が来た。内容は山岸氏の返答とそのものであった。理屈にならない説明である。 やりとりのなり行きをご覧いただきたい。改行の他は全く手を入れていない。
 まともな議論にならないのであった。 日本の科学教育は優れていると思っていたが、これほど単純なことも理解されないようである ・ ・ ・ ・


2009年12月15日 東京新聞朝刊 経済面より

『家庭充電プリウス2011年に トヨタが市販』 という記事が掲載された。

 要約は、従来からあるハイブリッド車の「プリウスをもとに、家庭の100V電源で充電できるタイプのプリウスを開発、当面特定の顧客向けにリース販売を開始する」 ということなのである。

読むと、まず揚足取りではあるが、「燃費はハイブリッド車プリウスの約1.9倍になる」 これは、1.9分の1のことであろう。記者の言語力、理解力が疑われる。

さらに読み進むと、
「電池での走行距離を23.4キロに伸ばした。充電残量がある間は電気自動車として、電池を使い果たしてもガソリンで走行でき、一リットル当たりの燃費はプリウスの30.4キロをしのぐ57キロに向上したという」 と伝聞形式で記している。 おそらくトヨタ自動車の発表を鵜呑みにして書いたのであろう。

この記者は
充電してから走る自動車の燃費を燃料リットル当たりで表示してなんら疑問を持っていない。
この自動車を走らせるには電気代も含めなければ本当の燃費は比較できない。

さらに、満充電で走行を開始した場合、初期のリットル当たりの走行距離は当然大きくなる、記事によれば最初の23.4Kmの間は燃料を全く使用しないではないか。

 ちょっと計算を試みる
旧プリウスと比較して内燃機関の効率が急激に上昇したとは到底考えられないし、仮にそうであればそこに重点を置いた発表になることであろう。
新プリウスも燃料を使った走行においては旧プリウスと大きな差はないと考えて良いであろう。

旧プリウスの30.4km/L =0.03289・・L/Km に相当する
新プリウスは満充電後の23.4kmは燃料を使わずに走行するのであるから、発表された57km/1Lのうち57Km−23.4km=33.6Kmを燃料を消費して走行する。
この33.6kmの間にどれだけの燃料を消費するかを旧プリウスのデータで割ると なんと1.105Lと出る。
どうということはない、満充電後に走行開始して、最初の1リットルを消費するまでの燃費を発表しているのである。そうだとしても、充電に要する電力料が別に掛かっていることを記さないのは詐欺に近いことではないか。 我々にはこの車に充電するためにどれだけの電力が必要なのかは全く判らない。
トヨタも売るためにはこのような詐欺に近いことを平気でするようだ。

短距離走行が多い使用方法であれば、燃料をほとんど消費しないで済む、そうすればこのまやかしの燃費よりもはるかに少ない燃費でこの車は使える。ただし、電力料がかかることは忘れてはいけない。
一方長距離を走る場合にはほとんど旧プリウスと変るところはないのである。

おかしいと思わない記者、そしてこの記事をそのまま掲載させるデスクにもあきれたものである。
しかし、このような まやかし的エコ を蔓延させているマスコミがいかに多いか、これを読んで下さった皆様は十分に注意をして頂きたい。

本当に何をすることが環境に必要なのか、良いのか を考察して記事にすることがマスコミの役目、そして我々は良く考察して正しい判断をすることが本当のエコロジーをもたらすことになる。

 


2007年9月11日 東京新聞 夕刊11面 「ライトアップ」より

☆・・発電機のモーターで推進し、環境に優しい船「スーパーエコシップ・フェーズ1」が、石油タンカーとしては国内で初めて建造され、長崎県佐世保市の造船所で十一日行われた進水式で「なでしこ丸」と命名された=写真。

☆独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」と大阪市の海運会社が共同で建造し、全長約七十b。約七四九dで貨物積載量約二千`g。石油の国内運送に使われる。

☆ディーゼルエンジンの従来船に比べ、燃費がよく排ガスも少ない。省エネタイプのスクリューを採用し、二酸化炭素(CO2)の排出量も約10%カット。温暖化対策となるエコシップだけに関係業界への"エコー"(反響)も大きそう。 以上記事引用おしまい。


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この記事を目にして、「記者は理解をしているのであろうか? 否、理解していればこんなことを書けるわけがない。 読者を馬鹿にした記事だと感じた。」 

「発電機のモーターで推進し、環境に優しい船」 この表現、何を言いたいのやら。

【電気を使っている=環境に優しい】  の等式
を根拠も無く覚えこんで記事にしているのであろう。

そもそも「発電機のモーターで・・」 ってどういう理屈で、どういう仕組みで船を推進するのであろう? この矛盾に疑問も持たずに、いい加減な記事を公にしても平気なほど、能の無い記者がいることに驚く。 その記事を掲載するデスクも同程度の理解力しかないのであろう。

「従来船に比べ、燃費がよく排ガスも少ない」と記しているからには 減ったとしても排ガスは出るということであろう。 いや「☆発電機のモーター☆」だけで船が進むわけがない。 推進力のエネルギー源は何なのか。それをどのようにして(おそらくモーターに電力の形で)供給するから良いのかは全く説明が無い。 「省エネタイプのスクリュー」とは単に効率の良いスクリューであって、この船にだけ採用されているものではないと思われる。
「説明はできないけれど、電気で推進するんだからエコなのだ」記者も読者も余計なことは考えなくても構わない 決まってんじゃないか ・ ・ という構図なのであろう。

義務教育で理解した知識だけでも、この表現がおかしいことは理解できるはずである。 さらに日々身の回りを観察し考察を重ねることが人生だと、自分は思っている。 この程度のことで 「文系だから ・ ・ 」とか「専門ではないから ・ ・ 」とかいうのはおかしい。

私が想像するには、この船がエコであるという理由はおそらく

ディーゼルエンジンで発電し、その電力をモーターに供給してスクリューを回しているのであろう。
電気モーターを使えばスクリューの回転制御は今日では電子的に自由に行える。 ということは内燃機関は最も効率の良い条件で運転し続けることができる。 内燃機関と発電機の関係も最善の設計を行える。 時に余った電力は蓄電池に充電しておき、必要な時に補助電源として使えば内燃機関の出力は小さいものにできる。  というあたりであろう。
記者はこれを読者に判りやすいように記事にするべきであった。

この記事はかなりひどい例である。 考察のない記事で読者を煙に巻くようなことはしないで欲しい。
きちんとした理解もなく ダイオキシン問題を喧伝し騒動にしたのも、塩化ビニルを悪玉にしたのもマスコミであった。
常に 考察すること 考察に基づいて、実のある省エネルギー、環境対策を 行うように心がけたい。


海水面を上昇させるのは

もう一つ、新聞紙上であまりにも頻繁に目にすることである。
「地球温暖化によって南極と北極の氷が融けて海水面が上昇する・・・」というのである。
皆さんは疑問に思われませんか?
 南極の氷は陸上にあるから、融ければ海水の総量が増えて地球の海水面が上がるであろう。 一方北極の氷が浮いていることは誰でも知っている。 浮いている氷は氷結するときに膨張した分比重が下がり、浮力を得ている。その水中体積は何ら変化していない。 ということは北極の氷が融けたところで海水面には何ら影響を与えない というのが正解であろう。
私立中学の入試に出てもおかしくないほどの簡単な理科の問題である。

 思考を停止した記者たちのおざなりな記事に翻弄されてはいけない。
このような記事を見ると新聞報道そのものの信頼に疑問を覚えることになる。

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