ヨーロッパや北米大陸で生活したことがある人は、皆口を揃えて言う
「家にいて寒いと思ったことは無い,日本の家は寒い」 と。
何故、日本の家は寒いのか? そこまで観察して来る人は少ないようである。 燃料を大量に消費して暖房しているのであろうか? 決してそうではない。 熱供給が少なくて済めば済むほどに快適に暖か(寒くない)な環境を作れるのである。日本の暖房技術は、室温が何度であるかを問うだけであって、いかなる条件の元に快適な暖房が得られるかについての基本知識にも欠けている。 ヨーロッパでは基本中の基本と言われるようなこと、言わば暖房の常識すら知られていない。
「省エネルギー設計です」と謳っている建築を見ても ヨーロッパの常識から見ると「技術偏重、実質無意味」なことだらけであると感じる。◎ 2011年末から、「隙間風」をKeyWordにしてこのページに来られる方が多くなった。本当の隙間風と 断熱が悪いために生じる冷気降下で感じる風とは区別しなければいけない。このページの最下段をご覧ください。
ヨーロッパでの経験と知識は暖房に関してのみで(冷房を備えているところは非常に稀であった)ある。 日本の多くの地域では、今日冷房を無視するわけに行かなくなっている。 暖房と冷房を一つの設備で両立させるようとする場合、問題が複雑になる。 残念ながら、ここでは暖房を主に考察をする。 冷房に関しても同様な考察は成り立つと考えているが、試行する機会には恵まれていない。
東北の某大学のトイレである。最近新しくなって臭いもなくなって気持は良い。
便座暖房の電力の節約を呼び掛けている。
これで節約できる電力はどれほどだろう?たかが知れていることは明瞭。そのトイレの窓をみると、改築した時にも2重ガラスにすることは考えなかったようである。
些細な省エネをして「環境に配慮している」ような満足感を味っている。
2重ガラスにしてエネルギーの無駄を防ぐのは、一時の出費で、永く効果を期待できる本質的な省エネである。
冬になれば、この窓も盛大に結露することであろう。
結露するのは多くの場合、湿度が高いからではない。
ガラス面の温度が低いからである。2重ガラス窓はよほど外気温が下がらなければ結露しない。
要するにガラス面の温度が室温に近いからなのだ。
本当に意味のある対策をとらなければいけない。
8.Nov.12
これは仙台のラーメン屋にあった水差し。
真夏である、中には氷が浮いている。普通なら容器のまわりは結露している。
この容器は二重構造になっている。内容器と外容器の間には空気層がある。
内容器の温度は外容器には伝わりにくい。 外容器の表面温度はほぼ気温と同じだから結露していない。 内部の氷水も長持ちする、外部には結露しない。下2つの画像のようなことは、湿気が多いから起きるのではなく、断熱が悪いから起きることである。
断熱がいかに大切かが良く判っていただけると思う。
新築のマンションの壁は結露しやすい。しばしば
「コンクリートが乾いていないから ・ ・ 」と説明される。
コンクリートから水分が出てくるのが原因と思われているようであるが、コンクリートからの水分も確かに出ているであろうが、それよりもコンクリートに残る水分のために断熱性が悪いことが主原因であろう。
コンクリートにプラスチックタイルを直貼りした床
コンクリートに壁紙を貼っただけの壁 では結露しても当然である。 ヨーロッパでは許されない建築構造である。8.Sep.10
これも仙台市内のマンションの出窓である。冬場に結露がひどいのであろう、下部に水受けを取り付けて外部に排水するようになっている。
部屋の取扱説明書に「冬場は湿気がひどいので換気に注意して結露させないように ・ ・ 」と書かれている。
決して冬になると湿度が上昇するのではなく、断熱が悪くてガラス面や壁面の温度が低くなるのでそこに結露するのが事実。
壁もコンクリートにに直に壁紙を貼っただけなのであるから結露しても当然。
下の施設の管理者も「冬は湿気るから結露する」と理解していた。 建築家も施工業者も管理者も 単純な物理を理解しなければ改善は難しい。断熱を良くすれば結露しない実例は上をご覧ください。
8.Sep.10
これは、仙台市内のある施設の窓である。床から天井まで一面のガラス。 外気温はほぼ0℃であった。
ガラスには激しく結露して下の鉄製の窓枠に水が溜まっている。ガラスに触れた室内の空気が冷やされ(暖房エネルギーの損失)、その結果過飽和となった水蒸気は結露している。
中部・北ヨーロッパの建築では窓の結露はほとんど見たことがない。 一部結露が起きはじめるのは外気温が−10℃程度に冷え込んだときであった。
ガラスの表面温度が下がることがないように2重ガラスを使用することが当たり前になっているからである。そして、アルミ製のサッシも外と中との間に断熱層を設けているからである。
1972年頃に住んでいた 1597年に建った古い家でさえガラスは2重になっていた。これは那須塩原駅前のホテルに宿泊した朝の画像、
5月末であるから、外気温が氷点下などということはない、おそらく10度前後であろう。ガラスは2重(いわゆるペアガラス)である。 でもこの結露。
ヨーロッパであれば許されない状態である。
-10℃程度になるとガラスに結露は出るが、サッシに結露が出ることは経験した事がない。せっかくの2重ガラスを入れても、アルミ(熱伝導が良い)サッシの表と裏の断熱をしなければこのようなことになるのは当然である。
2重ガラスにも結露しているのは、アルミからガラスに低温度が伝わった結果であろう。アルミに近い部分だけ結露していた。結露があるということは表面温度が低いということ、そして結露した水分の凝縮熱を奪われているということである。
31.Mai.09
暖房は窓の下 基本中の基本
日本の学校では「対流で室内が暖まる」と教える。
ドイツの教科書には「快適にするためには対流ができるだけ起きないようにする」と書いてある。経験は、後者が正解である。 どれほど気温が上がっていても対流のある空間は決して快適ではない。
対流があるということは[熱損失がある]ということ、そして上下の温度差が大きいということである。 顔は火照るほど暖かなのに足元は冷える状態を日本では頻繁に経験する。断熱を良くして(熱損失を減らし)、暖房の熱源温度をできるだけ下げ、熱供給を最も熱損失が多い場所(窓の下)に近くすることによって快適な暖房が得られる。 これはヨーロッパの暖房の基本中の基本である。
ヨーロッパの常識では 部屋の中央にストーブを置くのは間違い、窓のそばに暖房機を置いても部屋の中央に向かって暖気を送風するのは間違いである。
画像はストックホルムの空港。
家庭の居間、同様に窓の下に暖房のための放熱器がある。 放熱器の中をお湯が循環するのが家庭の暖房では標準。
湯の温度は35℃程度、放熱器の下側は手で触れると少し冷たく感じるほど。
湯温度を40℃以上に上げるのは外気温が-10℃を切るような寒さになってからであった。 湯温度を上げると室内の上下の温度差が大きくなり、あまり快適では無くなる。 とは言え、日本の多くの暖房よりは快適であった。
暖房に要する石油の購入量、貯蔵量は石油の輸送に要する燃料の消費量に大きく関係する、これについては→こちらを
Juni.09
ストックホルムの大学の発表の風景
おそらく日本の建築家も暖房施工業者は想像もしない施工方法であろう。高い位置に採光窓があり、そのすぐ下に温水暖房が取り付けてある。 ここでは、窓で冷えた冷気を下に落とさないことが大切なのである。 これは補助暖房であろう、平面放熱板で放熱面積はさほど大きくない。
主暖房は反対側の窓下に取付けてあるのであろう。
冷気を床に降ろさない、上下の温度差を極力少なくすることによって、気温はさほど高くないが寒さを感じない快適な空間を作っている。このような室内では、足が冷えることも、顔がほてることもない。熱源がどこにあるかを感じることもない。
火鉢に当たって前だけ暖をとって満足していた日本人の忍耐強さが、現代の日本の無感覚な暖冷房を許す結果となったように思う。そして、それは決して資源の節約にはなっていないのだ。
「暖房温度を何度下げて節約しています」などと胸をはっている政治家がいるが、ヨーロッパから見れば笑止の極みである。まるで本質的ではない。Okt.09
自宅の後付け2重窓(関東南部のマンション)
マンションの規定で、外観を変えることは許されていない。
従来のアルミサッシの窓(一重ガラス)の内側に木枠を作りガラスを入れて、二重窓とした。簡易な気密方法であるが、フェルトのパッキンを付けて、ネジで押さえつけて固定している。 強風の時にも隙間風は全く感じない。 結露は全く生じない、道路からの騒音も激減。 北側を全て二重にしたため、風が通過できなくなり、南側のサッシの隙間風も減少した。
日本の窓は気密が良くなったとは言え、ヨーロッパの窓と比べれば隙間だらけである。 無駄をしないためには隙間風を防ぐ必要はある。
しかし、無風状態の時にも隙間風を感じられることと思う、これは隙間風ではなく、ガラス面で冷やされた空気が降下して来る空気なのである。 2重窓にすることによって本当の隙間風と断熱不足によって生じる冷気降下の両方を改善することができる。この部屋は、下に電気式オイルヒーターパネルを置いて軽く暖房するだけで充分である。
このヒータ-にはOMRON製のサーモスタットを利用して温度が上がりすぎないように調整している。
Juni.09
本業の合間に気付いたことを記すのみ、完璧さは求めないで頂きたい。
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Nov.2006